信長と市姫(お市の方)についての論考です ※ブログの記事より抜粋
にいさまはお可哀相。誰もにいさまをご存知ない。 にいさまは本当はとてもお優しい方なのよ人に非情?冷酷な鬼?ちがうわ 本当は虫一匹お殺しになれない方なのよ涙を流したいのに 泣けなくて いつもどこかでひとり泣く場所をお探しになってらっしゃるの後ろ姿を見ていつも思うわ この人の肩はピリピリ痛がってて本当は誰かの肩によっかかりたいのに 見本となる肩がないものだから 自分で見本となる肩を作ろうとして必死でもがいてる誰かにすがりたいし甘えたいのに そんなの男児たるものにあらず、と誰にもお甘えにならないのとてもにいさまは辛いはずなのに 涙をお見せでない 泣かないのか、見せないだけかわからないけどもきっと陰ではお泣きになってらっしゃるわ そして皆の前では平然と振舞うの何も知らぬ周囲はそんなにいさまを冷酷だ冷血だと血も涙もない鬼であると噂する にいさまにいさまわたくしだけはわかりますにいさまがどれだけ周囲に打ち砕かれようとも わたくしだけはずっとにいさまの味方ですわにいさまは強い方だけど、弱い人間でもあるから 誰か弱さを見せる人間が必要なのよねわたくしだけにはそういう面を見せて欲しいと思うのに こともあろうに にいさまはわたくしだけには弱い面を出すまいかとしてよき兄であろうとなさる あの怖き鬼も人の子。妹御には優しいものよ、と人は云うそうじゃないわ。そうじゃないのよ にいさまは本当は優しい人なのよ誰ひとり傷つけたくないのに 傷つけなければいけないから 自分ひとりが悪となって皆の攻撃を受けることで犠牲になろうとしている 世の全ての悪を背負い込むことで皆の攻撃を一手に引き受け、攻撃を受けることで皆を救おうとしているの まるで異国のかの人のようね。あの方も自分ひとりが悪を背負いこむことで皆を救おうとなさったのよね にいさまはその方にご自分を重ね合わせて切支丹になったのよにいさまは仰ったわ おまえを幸せにしない男は俺の敵であるから攻撃に手をゆるめないと わたくしが幸せにならないとにいさまも幸せになれないから にいさまを幸せにするためだけにわたくしは誰より幸せになろうと思うわ
今宵の月は何と美しいこと。にいさまの好きな敦盛を舞いましょう 「人間五十年、下天のうちを比ぶれば夢幻の如くなり」 にいさまはそのゆめまぼろしの中を、確かに生きているのよ 覚えてあげる人がひとりちゃんといるから、生きていけるのよね だからわたしはにいさまの生きた証をきちんと最後まで覚えておくわ ------------------------------------------------------------- 天下一の美女、「お市の方」この方、織田信長の妹だと知る人は意外と少ない。何でも、「牛のような信秀 (信長の父) 殿に、よくまああんな天女のような娘が生まれたものだ」と云われていたそうな。牛・・・。信長パパ可哀相だ。 思うに、お市の方の美しさは先天的なものより、後天的なものがいっぱい影響しているのではないかと思う。 そう思う根拠は、兄の信長がきょ〜れつに妹思いだったからです。 妹の幸せを願うあまり、「こいつしかいない!」と思う人物に嫁がせようと、どの男性にも渡そうとしなかったのですが、絶対だめだ絶対だめだ。おまえじゃ妹を不幸にするかもしれない。 もし不幸にでもしてみろ。おまえを殺してやるっ >< こんな威嚇を各男どもに投げかけていたわけですよ。なんでここまで・・。 そこまでするくらい、私ってたいそうな人間なの?と幼い市姫 (お市の方) は思っていたんだと思います。 ここまで兄に思われている、大切にされている、という意識。幸せを願われているという意識。 もしも幸せじゃなかったら「いやだ!」と云ってくれる人がいるという意識。 これが、お市の方を「天下一の美女」たらしめるものになったのかと思います。 おまえは頭の悪い人間だ、本当に頭が悪い、と幼い頃からたくさん言われ続けた子は、本当に頭悪くなってしまう、とか、 可愛くない可愛くないとしつこく好きな人から言われ続ける女性が本当に表情がこわばってきて醜くなってしまうとか、 そういう話を聞きますが、 例えば、小さい頃から「おまえは○○だ」とくどいくらいにしつっこいくらいに一杯一杯褒められたらどうなるでしょう。 何も分からない子供はキョトーンとして「そうか、わたしはこのひとがいうように○○なのかも・・?」とすりこまれる。 で。あまりにもしつこくくどく云われるものだから、いい加減言い馴れてくるわけだ。「あなた美人ですね」 「あなた素敵ですね」「あなた可愛いですね」 もううんざり。そんなの兄からいっぱい言われててもう聞きたくなくなってくる。「そうですか。普通ですよ」 周りからすると、謙虚な人間にうつる。おごらない人だなぁ〜と。だから余計みんなはちやほや。 全く自惚れない態度に、女性陣も「ああなれたら理想だ」とまで思ってしまい、結果女性からも支持を受け、妬みを買うどころか 「あなたみたいになれたらいいのに」と言われる。あんまり周囲が肯定言葉を云うものだから、 「本当にそうなのか・・・?」と思ってしまい。本当にそうなってしまう。 発祥の大元はおにーさん。何も知らない周囲は「可愛いから可愛くてしょうがなかったんだろう」 と云う。「美人の妹を持つ兄はみんなああなのだ」「そりゃ妹思いにもなるさ」 順序・・・逆だったり。。して。。ね?(注:あくまで私のお花畑妄想です) きれいだな、と思うセレブレイトは何故か兄がいます。そしてブラコン。 あえて誰と誰と誰、ってここで列記するような野暮なことはしませんけども。 そういえば昔中国では、勉学を志す多くの書字生は、生涯の友ともいえる人物にしか妹を嫁がせないとかとかなんとか。 この話はまた今度にしておいて。 ------------------------------------------------------------- 前置きがまた途方もなく長くなってしまいましたが(ここからが本題織田信長さん。私は織田信長という歴史人物が大好きだ。 これ以上私のツボを刺激する人物はそうあるまい。 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、と三人いて、誰になりたいかと云われたら徳川家康だけれど、 惹かれる、守りたい、こういう人物を友にしたい、いやむしろ人生の師として迎えたい!という程の魅力を誇ってしまって私の心を捉えて離さないのは、織田信長だ。 何せこの人。父の愛に飢え、母の愛に飢え、弟を憎悪し、妹を心から大切にしている。のです。 父は厳しくこっちを向いてくれない、母は自分を愛さずに弟ばかり可愛がる、 誰も自分を見てくれないと奇特な行動をすると、「うつけ者」と云われる。 挙句の果てに幼い頃から教育役として傍にいた教育者にも見限られてあてつけのような自殺をされる。誰もこっちを向いてくれない。みんな自分を軽蔑する。理由があるのに。 甘えたいのに甘えられない。甘えるとひどく人格を傷つけられる。 強い自分としての自分を周りは評価してくれるが、愛を与えてくれる存在などいなく、皆、こっちを見てくれない。 昔から教育してくれた先生のような存在でさえも自分に失望して死んでしまった。誰も評価してくれない 評価してくれるのはかろうじて強さのみ強さがはがれたらもう誰にも評価されないのか また軽蔑の視線をくらう羽目になるのだろうかだったらずっと強い俺のままでいてやる そうじゃなきゃおまえらは皆遠ざかっていくのだろう 誰も強くない俺を、変だと云わずに受け止めてくれる存在などいない。ずっと強い俺のままでいてやろうじゃないか で。です。妹をとっても溺愛しているんです。 本当に冷酷で血も涙もない人間が、肉親に対してここまで情を傾けられるとは思えません。 愛に飢えた人だったんだろうなぁ〜、てのが私の見解。激情の人として知られるこの人。人に冷たいんじゃなくて優しすぎたんでしょうな。 優しすぎるから人を傷つけたらどうしようと勝手にパニックになって勝手に暴れ出す(周りからすると一人芝居 信長さんの正室である奥さんの濃姫さんはのちに「夫は大変な甘えん坊だった」と云っている。 甘えん坊であるから、どんなに凶悪なことをしてもつい笑って許してしまえるのだ、と。 信長さんは古い習慣を打ち破り、新しいものをどんどん取り入れ、 「捨てるべきもの」と「拾うべきもの」とに分けた合理主義者だったとされていますが、 この、「古きものを捨て、新しいものを取り入れる」のってすごい勇気があることだと思うんですよ。 そういうのって、したいんだけど、勇気がない。誰か他の人がやってくれないかな〜、、と思うことだと思うんです。 それをすれば、「何て大胆な」「目立ちたがり屋だ」と思われかねませんから。 誰かひとり、犠牲になることで、あとはどんどん人がそこへ介入していって物事は進んでいくんですよね。 信長さんはそれをしたんです。砕かれるであろう自尊心と恥を覚悟でそういうことをやってのけた。 自身が悪になることで、皆を何とかしてあげたいと思う気持ち。それを優しさと言わずして何といいましょう。 それに。です。 甘えん坊の姿とか、妹を心から慈しむ姿は、きっと冷酷とは遥か遠くのかけ離れたものだったと思うんですよ。ん〜まぁ要は天真爛漫なこまっしゃくれクソ坊主だったわけですね だからこそこの優しい孤独な人物に惹かれずにはいられない。 きっと思うんです。もし、ホトトギスが鳴かなかったら、信長は一緒になって鳴こうとしたんじゃないかと。 「ほら、こうやって。こうすれば鳴けるだろ?」って。 ------------------------------------------------------------- ホトトギスを殺した信長、鳴かせようと試みた秀吉、待とうとした家康。「開拓者」がいて、それをうまく模倣する「改良者」がいて、それを全て引き継ぐ「後継者」がいる。どれも完璧でないといけない。「改良者」はただ模倣するだけでなく、基盤となるものを利用することで基盤とは別の「擬開拓」をするという任務があり、「後継者」はただ引き継ぐだけでなく、請け負うものを台無しにしないようにきちんと後々にまで残るようにするという任務がある。 が。何はともあれ「開拓」しないと始まらない。何事も「開拓」あらずして物事は発展しない。 それをするのは、優しさであり、勇気なんです。 目立つことで批判を受け自尊心を傷つけられる覚悟を持つ犠牲の気持ちと行動する強さ。 母性と父性、ふたつの気持ちがあって出来ることなんですよね。
(了)アイコン素材 by
一応豆知識
● 織田信長の生年月日と血液型 ・ 旧暦5月12日 誕生 ↓ 今でいう6月末日に誕生・ 血判状からのDNA鑑定に拠ると、血液型はA型
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